開催報告|自動運転の社会実装に伴う法律問題を考えるシンポジウム〔資料・動画掲載〕

2021/06/17


2021/07/19 リンク不備を修正しました

5月21日(金)、法制度整備ユニットは「自動運転の社会実装に伴う法律問題を考えるシンポジウム~保安基準・国際基準の現状と自動運転に対する課題~」をウェビナーにて開催しました。

本シンポジウムは2部構成で開催しました。
第1部「法整備の現状」では、外部から講師をお招きし、国内外の法整備に関する議論や取組みなどについて紹介いただきました。
最初に国土交通省の猶野 喬氏(自動車局 安全・環境基準課 安全基準室 室長)より、「自動運転車の国内基準・国際基準」と題し、本邦における道路運送車両法および道路交通法の改正や自動運転車レベル3の型式指定などの国内における法整備に関する動きのほか、国連WP29(自動車基準調和世界フォーラム)における国際基準に係わる議論における日本の取組みについて紹介いただきました。

猶野氏 講演資料

続いて、独立行政法人 自動車技術総合機構 交通安全環境研究所の河合 英直氏(自動車安全研究部 部長、自動運転基準化研究所 所長)からは、「WP29の議論の現状」と題し、2019年6月に国連WP29において合意されたFramework Documentを取り上げ、国際的な議論における自動運転車の安全性に関する考え方について紹介いただきました。また、安全性と関連し、研究者として感じる社会受容性に関する課題についてもお話しいただきました。

河合氏 講演資料

第1部 講演の様子(左:猶野氏、右:河合氏)

第2部「自動運転車は事故を回避するために交通ルールに違反することが許されるのか?」では、名古屋大学COI法制度整備ユニットがリレー形式で講演しました。

第2部 講演資料

前半は事故を回避するために交通ルールに違反してしまう事例を取り上げ、自動運転車においてそのような挙動はどのように判断され得るのかを検討した結果についてお話ししました。

検討事例

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続いて、人間ドライバの場合はどのように判断され得るのかについて、岩月 泰頼客員准教授(名古屋大学 未来社会創造機構、松田綜合法律事務所、弁護士)が現在の刑事実務と照らし合わせて紹介しました。
事例検討に先立ち、まず中川 由賀ユニットリーダー(名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授、中京大学 法学部 教授、弁護士)が、今回取り上げる事例を紹介しました。走行中の自動車が飛び出してきた自転車を避けるためにやむを得ず歩道に侵入した道路交通法違反の場面で、事例1では怪我人はいませんが、事例2では自動車が歩行者に衝突をして怪我を負わせたというものでした。

その後、森田 岳人客員准教授(東海国立大学機構 名古屋大学 未来社会創造機、松田綜合法律事務所、弁護士)が、この2つの事例に対し、システム設計者が刑事責任に問われるのかどうかを現行法に照らし合わせた検討結果を報告しました。

最後に、中川 由賀ユニットリーダーより、これまでの検討結果を踏まえた今後の対応策として、事故回避目的での交通ルール違反が許されるかどうかの基準の明確化とその方法や、現状黙認されている円滑な交通を妨げない目的での交通ルール違反への手当などについて提案しました。

第2部の後半は、2021年2月に世界に先駆けて自動運転レベル4での公道走行を可能とする法案を閣議決定したドイツの動向について、樋笠 尭士特任助教(名古屋大学 未来社会創造機構、多摩大学 経営情報学部 専任講師)が紹介しました。社会学者や宗教家も議論に参加したドイツにおける自動運転に関する倫理規則とその分析結果について話した後、2021年2月にドイツ連邦政府にて閣議決定された「ドイツ道路交通法と自賠責保険法を改正する法律案」について紹介し、倫理規則との関係も踏まえた分析の結果についてお話ししました。

第2部 講演の様子(左:中川ユニットリーダー、右:岩月客員准教授)
第2部 講演の様子(左:森田客員准教授、右:樋笠特任助教)

なお、第2部の講演を含む法制度整備ユニットに関する取組みに対するご質問などは、第2部講演資料末尾に記載している連絡先までご連絡ください。


〔講演動画(第2部のみ)〕

法制度整備ユニットでは、自動運転などの社会実装に必要な法整備の在り方を検討し、提言を行うことを目的に活動しております。その特徴は、技術から離れがちな法律論を、技術・社会系研究者との共同研究や関係省庁や開発企業などとの意見交換などを通じて、分野間をつなぐ横串としての役割と現実解の提示を目指している点にあります。

今回のようなシンポジウムなどを通して、自動運転に関わる様々な分野の方々に本ユニットの取組みや法整備の検討状況などを知っていただくことで、自動運転などの新しい技術の安全な社会実装と、それを通じた安全な交通社会の実現に貢献したと思っております。

〔研究グループページ〕

イノベーション受容グループ 法制度整備ユニット

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